No.4 就業規則は、 絶対 作らなくてはいけないものなのか?

 


 就業規則の存在意義とは?


本音 でいいます。ゆえに多少正論から外れますが、ご了承ください。

ぶっちゃけ!個人的意見として言っていいならば・・・
労働関連法で、労使関係は制御できるので、必要性は・・・と思わなくもありません。

ただ、法律で、事業所において、常時10名以上の従業員がいるならば、制定が義務付けられているので 遵法の観点から絶対必要ということになります。

実際、行政からは、法律に沿った最低限のラインとして、就業規則のひな形が用意されています。
なので、組織があまり大きくないうちは、
要するに、社長が全従業員の顔をみれて、その仕事を把握し、 意思疎通が完全であるならば、
実務面からの必要性は薄く、法律を守る観点から、最低限のものを用意すればよいと僕は思います。
そして、組織が大きくなるのにあわせて、給与規定を整えたりと、 社長がすべてその時々に判断を必要とされるのでなく、 組織が自助的に動けるようにルールを就業規則に付け加えていくべきと考えます。

なお、就業規則は、1回作れば、それで完了ではありません。
労働関連法規が変更になれば、それにあわせて、変更する必要があります。
例えば、近年法改正のあった「有給休暇を10日以上与える場合に、以後1年以内に従業員に 有給休日を事前に5日とらせる」ことを就業規則に盛り込むよう行政は指導していますし、 色々と法律改正にあわせて、修正することが求められます。
また、経済環境の変化等によって、社内のルールを変える必要も生じることもあるでしょうし、 常に、修正をしていく必要があります。
 



 就業規則がないと・・・

前の文書で、就業規則の必要性は・・・
と申しましたが、それは、労使の意思疎通がうまくいっていて、 何事もうまくいっている場合です。

何か、不都合があった場合の、対処法として、就業規則は、効力があります。
例えば、就業規則の規定なしに、遅刻が多い従業員の反省を促すために罰金をとったとします。
それ、法律違反となります。
労働基準法で、使用者は、賃金はすべて労働者に払う義務があるので、上記の罰金は違反となります。

ただ、当初から就業規則で懲戒規定を決めて、罰則として定めていた場合は、法律違反になりません。

ひるがえって、従業員にとっても、懲戒処分の規定があることは、どんなことをしてはいけないのか あらかじめ気を付けることにもなり、就業規則を制定しておく意義はあると思います。

また、労働争議に関する裁判でも、社会通念上、会社側が正しいものであっても、 「就業規則に書いてなかったでしょ・・・書いてないことを従業員に強要することは・・・」とかいう理由で、 会社側が、負けている事例が多いです。

じゃあ、あればいいのか?
否!!!

そのうえで周知していることが必要です。

有名な事件で「フジ興産事件」とうのがあります。
マジで理不尽な事件です。(ある意味、担当弁護士が有能だったともいえますが・・・)

簡単に事件の状況をいうと
会社が受けたビッグプロジェクトを推進するため、推進責任者として、転職してきたAさん
プロジェクトを始めたはいいが、能力不足が露呈、しかも勤務態度も・・・
で、そのプロジェクトがとん挫する・・・会社は多大な損害を・・・
この結果を踏まえ、
会社は、自主退社を促すものの、これを拒否、
クビにしてくれと本人がいうので、最終的に解雇したところ・・・
Aさんは不当解雇で訴えてきました。
裁判になって、就業規則には、懲戒規定があったのですが、
Aさんの就業していた事業所に、就業規則が備えられてなかった ということで、Aさんが勝ちました。

怖いことです。

就業規則は、作成したら、ちゃんと従業員に周知し、いつでも見られるようにして、 置く必要があります。
しかし、これをやったから完璧というわけではないです。
労働裁判は、使用者にとっては悲しいかな・・・圧倒的に従業員が有利です。
ゆえに、大事にならないようにする・・・これが一番です。

ちなみに、大手に僕が居たときは、従業員一人一人に、数百ページの 就業規則の冊子が渡されてました。
(それで会社は、いつでも、従業員が就業規則を見れる環境を整えていたということになります。)
 


 就業規則があることによって・・・

就業規則があることの意義は、会社のルールの明文化です。
使用者と従業員の権利義務をしっかり規定し、それを知らしめることは、無用な争いや悩みを抑制します。

特に組織が大きくなれば、大きくなるほど、統一的なルールに基づいて組織を運営することが 大切です。
だって、従業員側から見ても、直接会社の意思(社長から指示を頂く)に触れる機会 がないわけで、「課長はああいっているけど、会社の方針と一致しているのか?」なんて疑念がわくこともあるわけです。

統一的ルールを明文化すればするほど、そのルールによって、会社が運営されるわけで、俗人的な部分で運営が変わって 不公平が生じる懸念が抑制されることにつながります。
特に、昇進、昇給ルールは組織の根幹です。
これによって、従業員のやる気、忠誠心が変わります。この部分については、 しっかりと考えて、自社の現状と将来像も踏まえて設計していく必要があると思います。
当事務所で、これを引き受ける場合は、最低半年単位で検討していくことになると思います。

また、就業規則には、会社の独自ルールを記すことができるので、会社の考え方、方針を 従業員に示すことができます。
僕は、この効果こそが、けっこう重要であると思っています。
従業員に会社の考え方や方針を理解してもらうには、ほかに、 社是、年間スローガン、年間方針書、等のようなものもあります。

従業員にとってつらいのは、何か課題にあたったとき、
そして自分でその課題に対処せねばならなくなったとき、
会社の方針が不明瞭なために、実際どう動くべきかわからないこと・・・です。

例えば、
仕入れ担当だったとして、
価格の安いA社
品質重視のB社
のどちらかを選ばねばならなかったとして、
上司が、明確な指示を出さない場合、
さらに言うなら、どちらかを選んだとして、
何かあったときに、「お前が、価格重視で選んだから、不良品になってしまった!お前の責任だ!」 というような後出しじゃんけんの如く従業員の責任を問うような体質の会社の場合
従業員は、本当に迷うと思いますし、そいうことがあちこちであると、課題は、先送り先送りになって 事業が停滞しがちになるかと・・・

まあ、上記の如く、露骨なものはないにしても、似たようなことは多いような気がします。
(僕には似たようなことがありました。)
あと、社是、スローガンは、単純明快が基本です。
わかりやすければ、わかりやすいほど、従業員に浸透しますので・・・
難しい言葉や難しい理屈は、それ自体は、高度で有意義なのでしょうけど・・・
従業員に浸透しなければ、それは、猫に小判です。

言葉とは、非常に不思議なものです。
その文言で、正当性を得たり、失ったり、人の信頼を得たり、失ったり、することも多々あります。

それゆえ、会社のルール、方針、文化を明文化することの意義は大きいですし、 やり方次第で、効果も変わりますので、就業規則だけに限らず、 組織の規模を踏まえてしっかり対応することが肝要だと 思います。