No.15: 「令和5年版 過労死等防止対策白書」 公表されました。

 

「令和5年版 過労死等防止対策白書」が厚生労働省より公表されました。

過労死ほど、悲しいものはないと僕は思います。
経営者にとっても、大事な従業員(特に、頑張ってくれている人)をこんな形で失うことはありえない話だと思います。
御社にとって、今は、他人事かもしれません・・・
それは、幸運なことですが、この報告書を見ることによって、御社にとって、気づきや改善点が見つかるかもしれません。
11月は「過労死等防止啓発月間」です。

この報告書を機に、よりよい職場環境の実現を考えてみては如何でしょうか?

●参照元:厚生労働省HPより 詳細はコチラ
なお、実際の報告書は285ページの大作ですので、渡辺的解釈によってまとめていますのでご容赦ください。
よりよく見てみたいという方は、上記の参照元からご確認ください。




 過労死等に関わる現状分析


労働時間
順調に削減が進んでいるという統計になっています。
ここでは、特に、月末1週間の労働時間が60時間を超える従業員の割合というものについての言及があります。
全体としては、労働時間の削減は進んでいるものの、業界の差等が指摘されています。
また、有給取得率は上昇傾向、労働時間と次の労働の間に一定以上の時間を取ろうという インターバル制度の普及も進んでいるということです。

行政としては、この流れをさらに・・・進める必要があるとの認識のようです。

メンタルヘルス
仕事や職業生活に関することで強い不安、悩み、ストレスを感じている労働者の割合は、 令和4年は 82.2%であったとのこと
これを令和9年度までに50%未満にするのが政府の目標ということです。

また、メンタルヘルス対策に取り組んでいる事業所の割合は、令和4年は 63.4%
令和9年までにメンタルヘルス対策に取り組む事業場の割合を 80%以上とすることを目標ということです。

つまり、行政としては、メンタルヘルス取り組みの義務化は50人以上の事業所ですが、これを広げていこうということか…と思います。

過労死の状況
労災の申請の数字が示されています。
それによると・・・
業務における過重な負荷による脳血管疾患又は虚血性心疾患等(以下「脳・心臓疾患」という。) に係る労災請求件数は、近年は増加傾向にあったところ、令和2年度は784件(うち死亡205件)となっているとのこと。

白書には、この記述をはじめとして、さまざまな角度からの分析がされています。
正直…時間が有り余ってないと読み切れん・・・
印象に残ったのは、50歳代60歳代に労災は多いとの記述もあり、
年齢とともに働き方を変える必要性を強く感じました。
事業者としてもそれを踏まえて人事労務策を講じる必要があると思います。


 



 過労死等の原因


過労死の原因については、単純に測れないようで、白書には以下の記述があります。
過労死等の実態の解明のためには、
疲労の蓄積や心理的負荷の直接の原因となる労働時間や職場環境だけでなく、 不規則勤務、交替制勤務、深夜労働、出張の多い業務、精神的緊張の強い業務、 その他の心理的負荷となる業務上の出来事といった要因のほか、 その背景となる企業の経営状態や短納期発注を含めた様々な商取引上の慣行等の業界を 取り巻く環境、労働者の属性や職場の労働者間の人間関係、睡眠・家事も含めた生活時 間、職場以外の人間関係等の労働者側の個人的な状況等、 複雑で多岐にわたる要因及びそれらの関連性を分析していく必要がある。

渡辺が思うに・・・
実際には、個々の事案に対しては、上記のように分析をするのだろうなぁと思いますが、 職場においては、事前の対策として上記すべてを押さえて・・・というのは現実的でないような・・・

ただ、絶対的に言えることがあります。
従業員の顔を見てください。声を聴いてください。
部下にへんな変化があったら、寄り添って、その部下の原因を取り除くための 努力をすること
これが、大切と思います。
(大手には、専門の相談室があったりします。ただ、その前に、上司がその機能を担うべきとも思います。 ただし、その上司がパワハラ上司で、その方が原因の場合は、専門の相談室以外ありえないですけど・・・ すいません。言いたくなったので言います。専門の相談室があったとしても、パワハラの相手が、会社の 権力者となると・・・その専門部署が機能しないことも実際に多々あるようで・・・結局、機能する仕組みを 作ることが大切です。)

いうのは簡単、行うのが・・・というのがこれで、
僕は、まずは、「おはよう」「お疲れ様」の声の掛け合いから始めるべきと思います。
常に対話できる環境作りです。
比較的、肉体労働系は、これ自然とできているところが多いとおもうんですけど・・・
事務系は・・・なところが多い印象です。
 



 国の行う防止策


国は、以下の防止策を実施していくということです。

周知月間等を通して、研究成果、法的仕組み等を広く国民に啓発していく他、 過労死等との関連性の高い「長時間労働」「メンタル」「ハラスメント」等の 取り組みを実施していく(つまり事業者に暗に陽に指導する)そうです。

●長時間労働の削減に向けた取組の徹底
・適用猶予業種等への時間外労働の上限規制の施行
・長時間労働が行われている事業場に対する監督指導等
・長時間労働等に係る企業本社に対する指導
・ガイドラインによる労働時間の適正な把握の徹底
・是正指導段階での企業名公表制度の運用
・36 協定に関する法令の周知指導
●メンタルヘルス対策
●ハラスメント防止対策

これらを掲げたうえで、医療、運輸等の業界を取り上げて、改善にむけて動いた 成功のケース等を紹介しています(長くなるのでここでは割愛)

渡辺思うに・・・
本当に、難しい世の中になっていきます。
比較的高年齢の構成が高まることも踏まえて、 労働時間の削減の取り組みは必須です。
そして人手不足も深刻化していくことが予想されます。
何もしなければ、業務は回らなくなる可能性が高いです。
国は、DX化を通じて、業務の効率化を推進し、それによって 人手不足と、時間削減分を補おうというシナリオです。

それで足りない部分は外国の方に・・・
例えば、以下は、象徴する動きのような気がします。
斉藤鉄夫国土交通相は10日の記者会見で、外国人労働者の在留資格である「特定技能」の対象にバス運転手を追加するため、 関係省庁と調整を進めていると発言しました。詳細はコチラ

いずれにしても、世の中の変化の流れに逆らうことは、厳しいです。
世の中の流れを押さえて、泳いでいくことが、重要と思います。
なお、労務関係の法改正等を追いかけるのは、相当な労働になります。
面倒だなあと思ったら、東大卒社労士にご一報下さい。